2015・9月の句会    ー第113回ー

 

飲んだ夜の句稿進むなあ            古戸暢

砂利踏む音に月射す

診察に呼ばれたトメさんニコニコ顔       克彦

湯に浸かり網戸にこおろぎ鳴く

僕は生きているそして俺も           人美

太陽と煙草のにほいのする猫を抱く

戦争少し勉強してこの夏の夾竹桃        歌也子

自由っておいしいぞと叫ぶ日は来なくていい

扇風機が痩せている今朝の薄ら日        妙子

自販機のお茶ぬるむ間の病院のベンチ

破れ障子に夏の小言聴く            喜久也

脳の酸素入れ換わる畔道の秋風

この先も遥か青く日本海            温

月明かり顔を忘れた猫鳴く

笑うだけの女をにらむ                    勝

目に刺さる古写真

ささくれひとつは自分のせいだ          酔魚

芝居跳ねて笑うた月が出ている

夜を洗い流す石鹸の匂いがちがう            一音

月は無く柿ピーのピーばかり手のひら   

公園に俺猫女子高生等間隔           けんじ

泣いてもよいが声は出すなよ

しがらみの殻脱げば飛び立つ他ない夏の虫    郁也
酷使の指には一本きりの注射

おんなの影ほのか炎を吐いてゆくようで     働猫

いやなもの三つ焼いて秋空

ひまわり居眠りしてる間に抜かれる       博之

似ている声ばかりで言い合いお彼岸

耳たぶの微熱草の実はじけたか         タケウマカエル

明日の米研いで月夜に吸いこまれる

こぼれるほどの種抱きしめて向日葵       ゆき
手を添えて拾う月のかけら

モンブラン秋を一匙すくいとる       麻由可
充電器にじっとしていたい日

だんだん遠くなる母のなかの鰯雲      架京

どの家もささやかな秋の灯といる

「定休日」の隙間もすっかり秋の風     貴子

野分の後は散らかしっぱなしの神々

夜露に秋が啼く                            錆助

蜻蛉高らか知人の死

夕立や急に割箸の割り方忘れた       圭一
半月の遠近法につられて歩く

うまい事いかなかった人の痕跡       ナカスジミソサザイ

留守番の仕方が分かって安心する

雲のへりが金色 今日は良い日に決まってる  えみ子

日差しの踊る眩しい道に子供の私が立っている

草原に風波ができ錆色の雲が手を掴む