8月の句会    ー第81回ー


デジャブの街角に法衣がとおる             人美      

向う側の夏にTシャツがゆれている

心何に例えよう 星またたく夜             昌子

新緑の日の思い出に立つ阿修羅像

苦瓜のためというだけでない雨が降る

記憶ジュンジュンと溶け落ちて夏の空白         れいこ

こんなところに挿まれていた一枚の思い出

落ちてくるまぶた叱りながら午後三時

始まるよ、亡父(ちち)と楽しむ骨董(じゅく)

策めぐらせて酢橘ぎゅっとしぼる            ゆう子

ろくでも無い思考の末に父母のこと

満月を磨いて初盆を待つ                秋生ゆき(由利子)

遠花火逢わない二人でいる

人を責めない人であの星になりました          歌也子

嫌いにさせないでください咲けない向日葵

これからは怒らない人と生きてゆく

警笛を聞き流した遮断機の沈黙             日和呂

脱ぎ捨てた革を見下ろし鳴かぬ蝉

味付けも良くなってすこし取り戻した妻の体調      そのべ章志

蔦のび葉ひろがってカボチャの花ひとつ

九年目の身の置き所若木挿す

置いてきぼりのまま絵葉書の海の色           架京

殻をぬぐ蝉にながれる大きい力

幼子来て犬秋めいた貌に                喜久也

三歩あるいて振り返る送り火のあと

この夏の意地悪過ぎる太陽で              つゆこ

山の上まで都会が追ってくる

バンダナ巻いた顔が決めている

九年目の身の置き所若木挿す

匙に閉じこめられた歪む顔               弄山

まだ生きてるぞ傘に蝉がポトリ

長雨の後の不機嫌なトマトを買う            貴子

まあこんなもんやて病院の軽いサンダル

最後の考え事してる蝉を跨いでゆく

グラスの氷と遊ぶ午後三時の音             えみ子

直売所の桃に群がる我も一匹