9月の句会 −第70会ー



淋しさ湯気で消せる 鏡の中の顔         

うっかり迷い込んで出口見付からない獣道       昌子


動かぬ顔を洗う                 

止まった時計に目が行く

女達は石を投げる                伊織                     


誰の生まれ変りかコオロギしきりに鳴いている  

ひとり掛けるひとりはどこまでいってもひとり

ひとりっきりの祭り、パックのお赤飯開ける     れいこ



熱波の街を雨が洗う     

夜の会話は缶ビール片手に犬と

「暑い」が口癖できて今朝の風              つゆこ



葉脈の一本となり隠れん坊   

からからと風の意で廻る             ゆう子



夏をかたずけた山里にけねけねが鳴く      

だいたいのことが終ってしもた秋の蝶           人美



もう怒らないで合歓の花やさしく咲く      

喧嘩は悲しい笑ってほしい人がいる            歌也子



閉じた朝顔かぞえるそんな暮らし         

強がりが悲しげでもありカンナの色             架京



バス停に褪めた夏をならぶ            

横顔しっかと見て懐古とする                喜久也



これっくらいの窓枠にはまる秋をください      

少年の穴だらけの耳から洩れる晩夏             貴子



臓腑空け月充ちてくる今日の贅沢          

雨に囲まれて見知らぬ猫を抱いている           えみ子



陽を銀色に水面の裏を歩く             

てのひらを照らしあい胸を開く                弄山