第137回エトレ句会出句一覧   2019・9・29

 

薄い空の夏を吸い込む          古戸信

たまに赤子が泣きよる夜行く

天皇陛下が蚊にさされた         克彦

ふとんにまどろみラジオ体操

だれもがみな「私」、私もあなたのひとりの「あなた」   岩渕幸弘
板ばりが沈む母の訊問がはじまる

婆たちの婆抜き澄まし顔のみんな      妙子

日暮れどきの聞いてほしいだけの電話

黒雲にぶちまけられた雨に負けている    酔魚

バス待つ間のカラスの目は無言

酔っぱらった帰り道を猫に見られた     一音
君と別れてまた次の雨雲
遠く飛ぶ声地に影残す           立日十

彼岸花一本一時間炎笑

西日差す母の腕の点滴のあと        ゆき
嬌声響くぬかるみに揺れるネオン

バケツの水撒く金魚が一匹入っていた    けんじ

ピロシキ食べたら北方領土返せよ

夏雲あれはきっとよく冷えた泡       博之

縄のれん波打つ氷の文字消えている

作り物めく熱帯夜の白い足         麻由可

一人分の湯気日常という薬缶

流行り物赤いビーツと白いゴーヤのスムージーひとり歩きす  かえい

公園デビューの甲虫ヤンヤヤンヤの陽の暮れる

会う約束だけが宙ぶらりんでかわいそう      昌子
心細さに雷雨

四角く欠けた魂からは拾いきれてない日常     郁也
実らずこぼれて秋間近

たこ壷弁当と骨壷のツーショット         うたたね凜

かぶりついたホットドッグがクワガタ

蜘蛛いっぴき夜の壁の主             架京

ひまわりうなだれるむこうに月  

涼寒涼灼アスファルトの上に臓器落ちてた     圭一

酷暑残る夕日のうしろに雲いるらしい

空を見る余裕が出来たから秋                和宏
転がしてみたくなるガスタンク

こんな暑い日に焼かれて骨になってあなた          タケウマカエル

こそりと音立ててこれが喉仏の骨です

夢の途中に割烹着の母がいる                人美

ひとりの街ひとりの暮らしひとりの僕

梱包された海が届いた日曜の朝               貴子

ドーナツも男も同じ日暮れ時 

泣きじゃくった児が眠る夕立                雅人

日曜の校庭蝉の独唱

虫の音が何度も何度も私を励ましている           知子

朝早くから猫は全てを心待ちにしている